映画『ミッドサマー』はどう観る?そもそも観るべき!?
『ミッドサマー(Midsommar)』は2019年公開のアメリカ映画です(スペルはスェーデン語によるものと思われます)。
監督はアリ・アスター。2018年の長編映画『ヘレディタリー/継承』で絶賛を浴びた、才能あふれる若手監督です。
ネットで「怖い」「怖くない」、「名作だ」「迷作だ」と評価が分かれてますね。
『ヘレディタリー/継承』で、アリ・アスター監督のシーン作りの上手さ、ツイストの効いたストーリー展開のすごさなどに感心し、「次回作も絶対観る(コワイけど)!」と思ったクチの私は、迷わず『ミッドサマー』も観ちゃいました。
文句なしに恐ろしかった『ヘレディタリー/継承』と違い、思わず「なんじゃこりゃ!」と笑ってしまうシーンもあるため、これはブラック・コメディなのか?それとも明るいホラーなのか!?と迷います。
ただ、後からジワジワと忍び寄ってくる怖さがあるのは確かです。
観ようかな〜、どうしようかな〜と迷っている人に向けて、ネタバレしない範囲で感想やあらすじ解説、キャスト紹介などしてみます!
まずは予告編!動画はこちら
謎と伏線だらけのあらすじを解説*基本ネタバレなし!
ストーリー的には、かなりシンプルで王道ホラーの道を辿っていると思います。
私もですが、1973年の映画『ウィッカーマン(The Wicker Man)』(2006年にニコラス・ケイジ主演でリメイク)を思い出した人は多かったようです。
ただ『ヘレディタリー/継承』と違い、怖いシーンを見せるのがあくまで一瞬だったり、北欧神話に関する知識がなければ分からない内容だったりと、細かい部分で「??」となるシーンが多くありました。
伏線も多いのですが、回収されずに終わってしまうものも…。
そんなわけで、鑑賞後にネットで調べて「そうだったのかー!」と思った部分も含めて、ネタバレにならない程度に書いてみます(軽く、バレちゃうところもあるかも…?)。
【ここから3分解説】始まりはヒロイン・ダニーの悲劇から
とある事件で、家族を一度に失った主人公の女子大生ダニー。
彼氏のクリスチャンは優しいけど、ダニーの背負う悲しみを支えきれるほど、大人ではありません。2人はケンカばかりしています。
そんな中、人類学を学ぶクリスチャンの友人ペレの故郷、スウェーデンへの旅行に、ダニーも行くことになります。
総勢5人の大学生が着いた先は白夜で夜も明るい、美しい土地。
素朴な人々のコミュニティで、同じように訪れていたイギリス人カップルとも親しくなり、珍しいお祭り見学に時を過ごす仲間たち。
ペレは、クリスチャンがすっかり忘れていた(!!)ダニーの誕生日をこっそり祝ってくれるなど、天使のようにダニーに優しくしてくれます。
現地の少女マヤがクリスチャンに興味を示したり、お調子者のマークが別の少女と良い感じになったりと、青春映画的な要素も含んだ、大学生の休日が続きました。
ジョシュ(後からクリスチャンも)は卒論の題材にするため、このコミュニティの風習を学びます。
今年の夏至祭は、「90年に一度」の特別な祭り。その最初のクライマックスを迎え、ゲストたちはショッキングな光景を目にすることに…。
一人ずつ消えていく仲間たち
それからは、イギリス人カップルのサイモンとコニー、マーク、ジョシュと、どんどん姿を消していきます。この辺りはホラー映画のセオリー通りですが、土着の信仰と相まった「訳の分からなさ」や、自分たちの常識とはかけ離れた世界観が怖さを増しています。
この部族は、「命の再生」について独自の考えや教えを持っていました。
隔離されたコミュニティを健康的に維持するため、時おり外部から「新しい血」を入れる必要があります。それが90年に一度のお祭り。部外者たちは「ハーメルンの笛吹き男」的な役目を持ったペレたちにいざなわれたのです…。
偶然なのか謀略なのか、ダニーはその年の「メイクイーン」に選ばれ、皆から祝福されました。
そして夏至祭の真のクライマックス。ある「役目」を済ませたクリスチャンと、重要な決断を迫られるダニーの運命は…?
爆笑シーンから恐怖のどん底まで、カタルシスを運んでくるラスト!
終盤は、思わず笑ってしまう極端なシーン、そしてがっつりホラーな終わり方をします。
これはブラック・コメディなの?と思った途端に、いやいや、明るいホラーだ!と思わせられました。
この映画の不気味な点のひとつは、ホラーと言えば夜なのに、明るいシーンが多いこと。あっけらかんと明るい太陽、美しい花々、白くて美しい衣装…。
明るいって、実はコワイんだと思わせられます。
観た人限定!公式サイトの解説シーンは必見
ネタバレになっちゃうので書けないことがたくさんありますが、見た人は、公式サイトの「観た人限定・完全解析ページ」をぜひ読んでください。そ、そうだったんだ…!とひざポンな知識を得られますよ!
このサイトの右下から入れます↓
DVD発売・レンタル開始はいつ?配信は?
映画の後で解説サイトを見たら、もう1回観たくなってしまうこと間違いありません!
なお、日本でのDVDの発売とレンタル開始は、2020年9月9日だそうです。
Amazon Prime VideoやU-NEXTなどの動画配信サービスでは、6月17日から行われているとのこと。
#ミッドサマー こんにちは
🌸🍀🌱『ミッドサマー』
Blu-ray/DVD発売に向け、アリ・アスター監督からパッケージソフトへの想いやコレクションについてコメントをいただきました!▶️https://t.co/8uzO9BLk8O pic.twitter.com/x3aNFfoYrQ
— 全国公開中『ミッドサマー』公式🌻💐☀️ (@midsommarjp) July 17, 2020
【余談&裏話】実話が元?テーマになった民間伝承とは
ミッドサマー』のテーマは、『夏至祭』という実際の伝統行事であり、お祭りです。
6月下旬の夏至の頃、メイポールという柱を立て、周りを踊って短い夏のスタートを祝います。「スウェーデン式盆踊り(!?)」でしょうか。
6月24日が聖ヨハネの祝日ということもあり、キリスト教とも関連があるそうですが、屋外で踊ったり花や緑を飾ったりと、土着の信仰から来ているイメージがありますね。
ロケはスウェーデンじゃなかった!
ストーリーの舞台はスウェーデン(ストックホルムのアーランダ空港から、車で4時間くらいの場所らしい)ですが、公式サイトによると、実際は予算の関係でハンガリーのブダペストで撮影されたそう。
北欧の物価の高さは有名ですもんね。しかし、ブタペストって首都なのに、こんな長閑な場所が残っているんでしょうか。ちょっと行ってみたくなりました!
キャスト解説または「よくこの仕事受けたなジャック・レイノー!」という叫び
主役のカップル、ダニーとクリスチャンの熱演は素晴らしかったですね。
ダニー役はフローレンス・ピュー。1996年生まれのイギリス人女優です。
代表作は『レディ・マクベス』や『ストーリー・オブ・マイライフ 私の若草物語(Little Women)』。
シアーシャ・ローナンやエマ・ワトソンと一緒に、4姉妹の末っ子エイミーを演じています。
2020年公開予定(コロナのため延期)のアベンジャーズ最新作『ブラック・ウィドウ』では、スカーレット・ヨハンソン演じるナターシャ・ロマノフの’妹’、エレーナ役に抜擢されました。
ゴッサム・インディペンデント映画賞の主演女優賞にもノミネートされたそうです!
Best Actress Nominee: FLORENCE PUGH in MIDSOMMAR #GothamAwards pic.twitter.com/glVBaWQw00
— IFP (@ifpfilm) October 24, 2019
ちょっと情けないけど、妙にリアリティのある彼氏・クリスチャン役はジャック・レイノー。
アメリカとアイルランドで活躍する男優さんで、『トランスフォーマー/ロストエイジ』などに出演しています。
しかし今回は、演技が体当たりすぎて「よくこのオファー受けたね…!」と感心するような、呆れるような気持ちです(^^;)。
また、現地コミュニティの赤毛の少女、マヤを演じたイザベラ・グリルも印象的でした。
セリフは少ないのに、眼力がすごくてミステリアスな魅力があります。最後に華やかな刺繍のあるドレスで、晴れやかな表情で登場した時の美しさも良かったです。
怖いのは闇より光、夜より昼という真実
ラストまで観た人はみんな、ダニーのその後を想像してしまいますよね…?
彼女はこれから、新しい家族を手に入れ、コミュニティの一員として幸せになるのでしょうか?
または、やはり部外者として排除される日がくるのでしょうか?
その際もきっと、白昼の明るい日差しの中で、あっけらかんと行われるのでしょうね…。
現実的なことを言えば、90年前ならいざ知らず、現代のアメリカやイギリスの親たちが「消えた学生の子どもたち」を放っておくはずもなく、コミュニティに捜査の手が延びて崩壊することも考えられます。
その場合、この映画には「消えゆく異文化へのオマージュ」という顔も出てくるかもしれません。
まあそんな蛇足な想像は置いといて、これから見る人は、ぜひこのジワジワくる「明るい怖さ」を楽しんでくださいね!