【おすすめ映画】ジェレミー・レナーの演技に震える。『ウインド・リバー』でアメリカの深淵を覗く

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『ウインド・リバー』とは?

実話を元に作られたという『ウインド・リバー』(原題;Wind River)は、テイラー・シェリダンが脚本・監督を務めた2017年公開の映画です。

2017年のサンダンス映画祭で公開されると高い評価を受け、カンヌ映画祭では「ある視点」監督賞を受賞しました。

ちなみに、最初は配給がワインスタイン・カンパニー(あのMe Too運動のきっかけになったハーヴェイ・ワインスタインの会社)という難点もありましたが、その後ライオンズゲートに移ったようです。

公式サイトはこちらのリンクからどうぞ。

場所と作品の背景

作品の舞台となったのは、The Wind Riverというネイティブ・アメリカンの保留地(リザベーション)。

実際にアメリカ西部のワイオミング州に存在する9,000km²ほどのエリアで、2010年の国勢調査によれば人口はわずかに2万6千人ほど。そのうちの半分以上がネイティブ・アメリカン以外の人種だそうです。

By Angela Burgess, USFWS. – https://www.flickr.com/photos/usfwsmtnprairie/35263690915, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=68396427

上の写真からも伝わるように、道のないワイルドな野山が広がる土地です。広大な大地を観光資源にしており、観光サイトもあります。

保留地というとネイティブ・アメリカンが保護されているような響きもありますが、実際には貧困に苦しんだり、若い女性や少女が巻き込まれる事件が頻発したりしています。

広すぎて警察の目が届かない部分も多く、司法の手も及ばない、過酷な現実が支配する土地。

『ウインド・リバー』は、そんな土地で起きた、アメリカの闇の部分、日陰に生きる立場の人々の苦しみを描いた映画です。

※最近観たアメリカの闇を描いた映画では、ジェニファー・ローレンス主演の『ウィンターズ・ボーン』(Winter’s Bone 2010年公開)も印象深かったです。ネイティブ・アメリカンとは違う立場の人々の話ですが、興味があったらぜひどうぞ!

参照;Wikipedia

予告編はこちら!

緊張感あふれるトレーラーをどうぞ!

アクションだけじゃない!性格俳優ジェレミー・レナーの真骨頂

この映画の主役、コリーを演じているのがジェレミー・レナー

マーベル映画のホークアイ役や、ボーンシリーズの『ボーン・レガシー』主演、トム・クルーズの『ミッション・インポッシブル』シリーズなどアクション映画への出演が多い役者さんです。

彼の個性的なところは、単純に派手なアクションでスカッとさせてくれる「陽」のタイプ(例えばクリス・エバンスやクリス・ヘムズワースなど)と違い、どことなく「陰」の部分を感じさせる点。

「陰」という表現はちょっと極端かもしれませんが、物事の裏の裏まで見通しているような、いつも何か深謀があるような味がある俳優だと思います。

アカデミー主演男優賞にノミネートされた『ハート・ロッカー』で、得体が知れない役柄を演じたのも似合っていました。

純白のスーツが象徴する、安易な救いを拒絶する虚無感

※こちらはあらすじに関わる内容を含みます。公式サイトに書かれている以上のネタバレはありませんが、読みたくない人は次の画像があるところまで飛ばしてください。

そんなレナー演じるコリーは、ウインド・リバーのハンター。雪原では真っ白いスーツに身を包み、スノーモービルを乗りこなしています。

ある日彼は雪原で、裸足で息絶えたアラパホ族の少女・ナタリーを発見。

後日、彼がナタリーの親の元を訪れ、父親と何も言わずに抱き合うシーンがあります。

ああ、この2人は友達だったんだな…と思いましたが、実はそれ以上に深いつながりがありました。

ナタリーとコリーの娘は親友でした。

そして、コリーの娘エミリーもまた、不可解な事件で命を落としていたのです。その原因となった人間は現れておらず、家族は何が起こったのか分からないまま、止まった時の中を生きていました。

娘を理不尽な理由で失った父親2人が語り合うシーンでは、泣きわめいていなくとも、彼らの怒りと悲しみ、絶望感を感じずにはいられません。

会話の中でナタリーの父が、コリーに「お前は何をするんだ?」と尋ねました。

コリーは「自分はハンターだ。何をするのが仕事だと思ってるんだ?」と答えます。

ハンターの仕事。それは、獲物を追い詰めて仕留めること。

それが今回の事件でのコリーの目的となります。

私には、ハンターとしてのコリーの服の白さが、視覚的に非常に印象的に感じられました。

雪原で目立たないようにというごく単純な理由なのでしょうが、シミひとつ見当たらないシャープな無色さは、彼の心を苛む虚無感や苦しみの鋭利さ、それに苛烈な怒りを表しているようです。

本来なら、犠牲になった可愛らしい少女達にこそ似合う純白の色。

その色をまとって雪原を行くコリーには、人の同情も悪意もはねのける意思の強さ、そして孤独感が漂っています。

こんな演技ができるジェレミーのすごさ、演出の妙に息を飲みました。

アべンジャーズのファン必見。エリザベス・オルセンとの共演再び!

 

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Bringing the laughs to #Cannes with Taylor Sheridan and @renner4real #windriver #grumpykids

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ナタリーの事件を捜査するために、FBIの捜査官ジェーン(エリザベス・オルセン)が送り込まれてきます。

たった1人の新人を送り込んでくるあたりにFBIのやる気の無さ、または及び腰加減が伺えますが、ルーキー捜査官のキャラクターはセオリー通り、やる気満々で正義感いっぱいです。

役者はエリザベス・オルセンでなくても良いような気もしますが、青臭くも好感の持てる捜査官の感じはよく出ていました。

ここでちょっとミーハーな話になりますが、オルセンと言えばメアリー=ケイトとアシュレーの双子のオルセン姉妹の妹として有名ですね。

役者としてはアベンジャーズのスカーレット・ウィッチ役で大ブレイク。その際にホークアイのジェレミーと共演しているため、今回は2度めの共演です。

今作品の中でも特に恋仲になるようなことはありませんが、2人が信頼関係を築いていく様子、ジェーンがコリーの「やるべきこと」に理解を表明する場面などからは温かみが感じられます。

また、終盤に2人が病室で話す場面は日常感があってほっとします。

ウインド・リバーの広大な土地に感じる不安感に比べ、人工的で狭い病室のシーンに安心できるのは、やはり私が平凡で便利で安楽な、町の暮らしに慣れきっているからなのでしょう…(^^;)。

【大注目】テイラー・シェリダン初監督作品

もともとこの映画を選んだきっかけは、ジェレミー・レナーを観たいというミーハーな気持ちからでした。

しかしここで、ジェレミー以外にも『すごい才能を見つけてしまった…!』という気持ちにさせられたのが、監督のテイラー・シェリダンです。

雄大な大自然に抱かれて生活していると言えば、街に暮らす私達は、厳しいながらものびのびとした生活を思い浮かべます。

しかし、この映画で描き出されるのは、むしろ都会よりも息が詰まるような人間関係の中で暮らしている人々。

その閉塞感は居留地に押し込められたネイティブ・アメリカンだけでなく、歴史的に彼らを押し込めた白人達の間にこそ蔓延しています。

広々とした雪原の純白の色が、押しつぶすような「圧」を持って迫ってくる、特殊な雰囲気。

全編に流れる、言葉で説明されることのない圧を巧みに表現しているこのテイラー・シェリダンという監督は一体ナニモノ!?と思わざるを得ませんでした。

元は脇役俳優

シェリダン監督は1970年にテキサスで誕生しました。映画界とは縁のない、素朴な家庭で育ったそうで、映画界に入るきっかけはスカウトだったそうです。

役者としてはTVドラマ『ヴェロニカ・マーズ』や『CSI;科学捜査班』、映画『ホース・ソルジャー』などに出ています。脇役ながらそこそこメジャーな作品に出演していますよね。

脚本家としても活躍!『フロンティア三部作』はぜひ制覇したい

地味ながら役者でもやっていけそうなキャリアがあるシェリダンですが、40歳にして『ボーダーライン』で脚本家デビュー。

その後も『最期の追跡』や『ボーダーライン;ソルジャーズ・デイ』の脚本を担当し、「ネオ・ウエスタン」という新しい西部劇のジャンルを作り上げつつあります。

なお、『ボーダーライン』(原題: Sicario)と『最期の追跡』(原題;Hell or High Water)、『ウインド・リバー』は合わせてフロンティア三部作と呼ばれているそうです。

どちらも観ましたが、特に『ボーダーライン』は主演のエミリー・ブラントベニチオ・デル・トロの演技が光る傑作だと思います(エミリー・ブラントが出ると、どんな映画でも良く見えちゃうんですが…笑)!

これも簡単に解決の出来ないメキシコ社会の暗部と、それに関わったアメリカ側の人間のやるせなさが絡み合う作品です。ベニチオ・デル・トロが続投している続編も見ごたえがありました。

やり場のない切なさが胸を打つ『ウインド・リバー』は必見!

この映画のラストでコリーが取る行動を否定する人は、あまりいないと思います。

むしろ「よくやった!」という人がほとんどでしょう。

でも、それでもコリーの本当の悲しみや悔しさ、ナタリーの家族の悲嘆には終わりがありません。

映画の背後にあるたくさんの家族や犠牲者たちの声も、そのほとんどは私達には聞こえてこないもの。

それでもこの映画を観ることで、華やかで豊かな面だけではないアメリカの深部を、ごくごく一部ながら感じることができます。

アメリカに興味がある人もない人も、ジェレミーのファンもそうでない人も、ぜひ一度、観てほしい映画です!

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